【育児ミステリ】消えたカメはビールに溺れる
私の名前はミヤロック・ホームズ。探偵だ。
クリスマス・イブの夜のこと…
数年前であれば帰宅とともにスパークリングワインをポンッとやり、妻とディナーを・・・というのがお決まりの流れだったのだが、現在の私は探偵である前に一人の父親である。今夜はサンタクロース氏から配送されるプレゼントを受け取り、ツリー下に設置するという重大ミッションがある。そのためには娘をお風呂に入れ、早く寝かしつける必要がある。すべてがスムーズに終われば最後に缶ビールで乾杯する時間くらいはあるはずだ。確か冷蔵庫には6缶パックのラスト2本が残っていたはず・・・ちょうど明日の古紙回収に合わせて今朝パッケージを古紙回収袋に入れたところだったからビールの残数は記憶している。
しかし、物事は予定通りにはいかないものである。この日も残酷な運命は私の計画を阻んだ。事件が起きたのである。
消えたカメさん
妻「あれ?おかしいな・・・カメさんがいない・・・」
聞くと、保育園のクリスマス会でサンタさんからもらったカメさんのおもちゃ(ゼンマイを巻くと腕がくるくるまわって水の上を泳ぐ!!)が忽然と姿を消したとのこと。お風呂で遊ぶのを楽しみにしていたので準備しようとした妻がカメさんの失踪に気づいたのである。
走査線上には2人の容疑者が浮かび上がった。
容疑者1 娘
2歳。年齢相応の予測不可能な行動により、箱ティッシュ惨殺事件やズボン2枚履き事件、オムツ脱ぎ捨て就寝事件(これは本当に厄介だった)など、これまで数々の難事件を起こしてきた。残念ながら迷宮入りした「消えたJoy-Con事件」の犯人も彼女ではないかと私は睨んでいる。先日の「フラタケオハン事件」は読者諸君の記憶にも新しいだろう。
私「あなたはさっきまでカメさんと遊んでいた。そうですね?」
娘「サンタさん、くるかな。」
私「質問に答えてください。カメさんの失踪に心当たりは?」
娘「サンタさん、会えるかな。」
だめだ。捜査に協力する気持ちは微塵もないようだ。会話の論点をずらすあたり、限りなく怪しいが彼女を犯人とする証拠は出てきていない。次だ。
容疑者2 妻
まさか、ありえない。第一何のために?そう思った読者諸君も多いことだろうが待ってほしい。私の妻は基本的に賢く要領がいい一方で、意外と抜けている部分もある。2つ切りにしたキウイフルーツをタンスの上に置き忘れたり、食べかけのバナナをデスクの引き出しにしまったりと、これまでも無意識にとぼけた事件を起こしている。特に収納とフルーツには相性が悪いようだ。今回姿を消したのはおもちゃのカメさんだが、意図せずどこかの収納に押し込んでいる可能性は否定できない。
私「カメさんを最後に見たのはいつですか?」
妻「夕食の準備をしている時です。娘が楽しそうに遊んでいました。今日のお風呂に持っていって遊ぼうねと声を掛けると、すごく嬉しそうにしていたのを覚えています。」
私「なるほど。犯行時刻にあなたが夕食を作っていたことを証明できる人は?」
妻「ごはんいらないのね?」
私「ごめんなさい」
こちらも手詰まりだ。とは言え、まるで準備していたかのように自分の見解を饒舌に話し、アリバイを確かめられると圧力をかけてくるあたり、怪しさは残る。
容疑者3 ネコたち
我が家にはネコが2匹暮らしている。上が11歳、下が7歳。おてんば盛りは過ぎたが未だにいたずらっこだ。話を聞いてみる。
私「ちょっとお聞きしたいのですが・・・」
猫s「・・・。」
だんまりである。何か不都合なことでも隠しているのだろうか。埒が明かないので次だ。
どの線も決定的でなく、かと言って完全にシロと断定できるわけでもない。聞き込みは手詰まりか・・・。
現場検証
私は捜査を現場検証に切り替えた。カメさんを無事発見することが一番の目的。そうすれば自然と犯人が浮かび上がるということも考えられる。事件はこの家の中で起きたことはわかっている。家の何処かにカメさんはいるはずだし、何らかの手がかりが見つかることだってある。捜査開始だ。リビング・・・いない。寝室・・・いない。となれば子供部屋・・・こちらも空振り。妻が犯人の路線も捨てきれないので、帰宅してから夕食までの彼女の動線をイメージしながら収納各所もチェック。だが、カメさんの気配は感じられない。となれば事故の可能性だ。ふとした瞬間に何処かの隙間に入り込んでしまう。そんなことはこれまでもあった。
余罪
我が家には座り心地のよいソファがある。あまりの心地よさに明け方までうたた寝をしてしまい、妻に怒られるなんてこともしばしば。しかし、このソファにはあらゆるものを飲み込んできた後ろ暗い過去がある。半年以上探した耳かきがクッションの隙間から出てきたことがあった。他にも、お絵かきボードのペン、車の鍵、自転車のライト、ギターのピック・・・あげだしたらキリがない。今回もこの我が家のバミューダトライアングルにカメさんが飲み込まれたという可能性は十二分に考えられる。早速捜査だ。
ん?何かある。

尻!?まさか人…!?私は急いで取り出した。

これは!先週から探していたおままごと用のモモ!!
なるほど、ソファだけに叩けばホコリがでるってか!やかましいわ。
しかしそれ以上の収穫はなし。
と、ここで私は不可解な点に気付く。古紙回収の袋に入れたはずのビール6缶パックのパッケージが無造作にリビングの中央に置かれている。「おや?」と思うやいなや娘がパッケージに近寄り、中を覗き込む。
「犯人は現場に戻る」というやつか!奴さん、とうとう尻尾をだしたぞ!私は現場に急行した。
娘「カメさん、お家いいねぇ〜。お風呂、行く?」
私はパッケージの中を覗き込んだ。
空だ。
いや、違う。影だ。
影…? なぜ影がある?
いた!!

ビールのパッケージのお家の中にひっそりと。そういうことだったのか。ことの真相はこうだ。
保育園から帰宅した妻と娘はリビングで一息つき、カメさんで遊んでいた。妻はそのまま夕飯の支度に取り掛かり、娘はそのまま一人遊びへ。おままごとにハマっている娘はカメさんのお家が欲しくなり、雑紙の中からビールのパッケージを発見。お家に見立てて遊んでいるうちにご飯が完成。そこに私が帰宅。
つまり犯人は・・・いや、犯人なんていなかったのである。
ともあれ、カメさんの無事が確認できて本当によかった。
その後はカメさんと一緒に楽しくお風呂に入りましたとさ。めでたしめでたし。
エピローグ
育児はミステリの連続です。
ものがなくなった、わけのわからないことを言っている or やっている、いろいろありますよね。時にはイライラしちゃうこともありますが、できるだけ謎解きASOBIとして楽しんでいきたいものです。
みなさんのご家庭ではどんな事件が起きていますか?
ではでは、またまた。
